この記事は危険業務への就労拒否について書かれています
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2009年08月24日

危険業務への就労拒否




今日は個別労働紛争の判例事例について説明します。


労働者Xらは、日本電信電話公社法により設立された

公共企業体であるY社に雇用された者です。

昭和31年日韓間の海底線のある地点で障害が発生

しました。Y社は海底線の専用契約を締結している

在日米軍から修理の要請を受け、その修理を

敷設船千代田丸に担当させることとしました。

その頃、全電通本社支部はこの工事に関する

労働条件等についてY社と団交中でありました。

本社支部は、「Y社が一方的にY社案を押し付けて

出向させようとしている」とし、「出向命令が出ても

出向に応じるな」との闘争連絡を発しました。

出向命令を受けた千代田丸船長は命令を発したが

組合員である一等航海士等が職務につかず、

出航することが出来ませんでした。

Y社は、本社支部の三役であるXらが共謀して

争議行為をあおり、そそのかしたものとして

旧公共企業体等労働関係法に違反したこと

を理由として解雇しました。


これに対してXらが、雇用関係存続確認の

訴えを提起しました。

労働者Xらは勝ったでしょうか?負けたでしょうか?

考えてみてください。最高裁裁判例です。






答えは「労働者Xらの勝訴」です。

では、その理由です。

本件における危険は、具体的なものとして当事者間に意識されており、

米海軍艦隊の護衛が付されることによる安全措置が講じられた

にせよ、過去において発生した実弾射撃演習との遭遇事件の

例からも必ずしも十全とは言えない。

このような危険は、労使がいかに万全の配慮をしたとしても、

なお避けがたい軍事上のものであって、海底線敷設船である

千代田丸乗組員の本来予想すべき海上作業に伴う危険の

類ではない。

また、その危険の度合いが大きなものでないとしても、

千代田丸乗組員が、その意に反して義務の

強制を余儀なくされるものとは言い難い。


組合側とY社との間の団体交渉は未だ妥結されず、

しかも、本件航海および海底線修理作業必ずしも

危険でないことを保障されていない当時の事情の

もとにおいて、

Y社が千代田丸乗組員に対し本件

出航を強制する業務命令を発することは、

Y社にやむを得ない事情があったとしても、

組合側に対しては十分の説得力をもつ

措置とはいい難い。


このような事情のもとにXらを旧公共企業体等労働関係法

違反とすることはいささか酷にすぎる。

本社支部のXらが出航を25時間余遅延

させたというだけの理由によりなされたX

らの解雇は、妥当性・合理性を欠き、Y社

に認められた合理的な裁量権の範囲を著

しく逸脱したものであり無効である。


という判決でした。

本件は、命ぜられた業務の内容自体は、海底ケーブルの布設

という通常の業務でしたが、作業場所が軍事緊張下にあり、その

意味で従業員の生命・身体に対する危険を伴うものであり、

これが業務命令権の一般的限界を超えるかが争われた事例

でしたが、最高裁は労働者の業務遂行において、本来の

予想を超えた生命の危険が現実に起こりうる業務命令は

労働義務の内容をなすものではないのであって、その危険

が必ずしも大きいものでないとしても、労働者は、その意に反して

業務の履行を強制されるものではないとしました。

この判決により、業務命令が通常の労務

提供において予想を超える生命・身体に

対する危険がる場合には労働者がこれに

従う義務がないことが明確になった重要な判例です。
 
  


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現在は身の危険を犯してまでの業務命令の遂行は当然無効と考えますが、当時はまだそのような意識はなかったのでしょうね・・そういう意味では重要な判例です。ペッタンは身の危険はありません。安心して業務遂行をお願いします

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『危険業務への就労拒否』へのコメント

社労士試験を受けてきました。合格発表までドキドキですが、
合格のアカツキには、「先輩!」よろしくお願いしますね。
(気が早いか・・・!(^^)!)
Posted by KAMEREON at 2009年08月25日 15:59
頑張られますね・・社労士の試験も受けられたのですね・・

今年はネットで見る限り、選択労基、労一が難関だったらしいですが、毎年、必ず、選択に難問を用意していますネ。

でも、去年や、私の年の時のように奇問と言われる問題はなかったようですね!

運が作用しない本当の実力が試される試験であって欲しいですね

ところで、私は 「先輩」と言われる程のことはありません。
まだ、開業7か月の若輩者です。

それでは、 しばらくは、ゆっくりして、疲れを癒してください。
KAMEREONさんの合格を祈念しています。
Posted by くまさん社労士くまさん社労士 at 2009年08月26日 00:40
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