2011年07月28日
残業代金の支払方法1
多くの従業員が在籍する企業では残業代金を算定する事務
は相当な負担があります。この事務量を減らしたいとの
観点から、使用者と従業員が残業代金を定額とする合意
を行う場合があります。
これが多くの企業で取り入れられている
「固定残業制」と称されるものです。
この「固定残業制」について、正しい理解がなされない
ままに採用している企業が散見されます。
固定残業制は、残業代金を定額とする合意に基づくものですが、
時間外労働時間が発生すれば労働基準法第37条に基づいて残業
代金請求権が発生することは否定できないため、
企業と従業員の間であらかじめ合意された残業
代金が対象とする相当の労働時間を超える時間
の労働時間があった場合は、その合意の存在に
かかわらず、その超えた労働時間について、残
業代金を追加で支払う必要があるのです。
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2011年03月24日
泊まり勤務で実作業に従事していない仮眠時間の対応
あるビル管理会社で泊まり勤務があり連続7時間ないし
9時間の仮眠時間があるが、その時間帯に実作業の実施
が必要となれば、その時間の実作業時間に対して残業代金
の支払が認められているものの、それ以外の仮眠時間その
ものについては泊まり勤務手当のみが支払われており、
所定労働時間には入れないという取扱いを行っている事案
がありました。この事案は、寝ている時間も「労働時間」
に当たるのか?という問題になります。
つまり、泊まり勤務手当を支給することで
企業と従業員が合意をしているのであるか
ら、それで足りるのではないかという考え
方もあります。
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2011年02月17日
業務上必要な準備行為が労働時間に該当するかの有無
従業員の始業・終業時刻に絡んで、作業着への着替時間、
構内歩行時間、体操時間等が「労働時間」に当たるか否か
が問題となった事案において、裁判所は、「就業を命じら
れた業務の準備行為等を事業所内で行うことを使用者から
義務付けられていること、あるいはこれを余儀なくされて
いる」との評価を行い、そして、「労働者が始業時刻前に
更衣所等において作業服および保護具等を装着して準備体
操場まで移動し、副資材等の受け出しをし、散水を行い、
終業時刻後に作業場等から更衣室等まで移動して作業服
および保護具等の脱離等を行った場合、同労働者が、使用者
から、実作業にあたり、作業服および保護具等の装着を
義務づけられ、当該装着を事業所内の所定の更衣室等において
行うものとされ、副資材等の受け出しおよび散水を始業時間前
に行うことを義務付けられていた等の事実関係のもとに
おいては、当該装着及び準備体操場までの移動、副資材等の
受け出し、散水、更衣所までの移動及び離脱等は、使用者の
指揮命令下に置かれていた評価することができ、労働者が
上記行為に要した社会通念上必要と認められる時間は、労働
基準法32条の労働時間に該当する」との判断を行いました。
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2011年01月13日
「黙示の指示」による残業とは
始業時刻の前、あるいは終業時刻の後に行った業務は法定労働時間
を超えるものとしてすべて時間外労働と評価されて残業代請求権が
発生するのでしょうか?
残業代請求権が認められるためには、以下のようなプロセスが必要
となります。
1.使用者による従業員に対する時間外労働命令
の実施
2.その命令に基づいた従業員による業務の実施
3.残業代請求権の発生
すなわち、「従業員が自主的に残業を行ったと
しても、それが使用者による時間外労働命令に
基づくものであれば、その業務に対する対価は
発生する」ということになります。
このことは、実は法律にも明記はされていませんが、残業代請求問題
に取り組む上で極めて重要な基本事項です。
そして、大切な問題は、この大原則を踏まえた次のステップにあります。
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2010年12月09日
残業代金請求権利発生のメカニズム
本来、賃金とは「労働契約」に基づいて発生しています。
そして、労働契約の内容は
1.使用者と従業員の合意
2.合意に基づいた使用者からの業務命令
3.従業員からの労務提供
4.賃金の発生
というプロセスの流れになっています。
そして、1.と2.のそれぞれの「合意」に
おいては、特に業務の内容を特定しないで雇用
を行う場合もあれば、職種を限定したり、時間
給のパートタイムとする合意を行う場合も
あります。
日本の企業における労働契約の状況は、正規雇用
か非正規雇用かといった雇用形態の差異があること
はもちろんですが、
労働契約締結の時点においては、具体的な職務
は定めていないことが大半となっています。
これは、特定の職務に対して賃金を支払う
という考え方に立つ欧米諸国の雇用形態とは大きく
異なり、日本型雇用の特徴となっています。
これらのことは、「就業規則」の位置づけを理解する
ことに役立ちます。
法律では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する
場合において、使用者が合理的な労働条件を定めら
れている就業規則を労働者に周知させていた場合
には、労働契約の内容は、その就業規則で定める
労働条件によるものとする」と規定しています。
そして、就業規則に定める労働契約の内容のうち
業務の範囲については、包括的な規定で足りる
としています。そのため、多くの企業の就業規則
には、企業が業務上必要とする業務を広く命令できる
規定となっており、配置換え・転勤などについても
業務上の必要性が認められる限り企業がその命令を
発することができるようになっています。
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2010年11月04日
労働者に対する安全配慮義務
電通事件(平成12年3月24日 最高裁判例)は、長時間
労働に起因した精神疾患に伴う自殺に対し、企業の安全
配慮義務違反の法的責任を指摘し、多額の損害賠償請求
を容認した事件として有名です。
事件の概要は
労働者Aが平成2年4月1日、大手広告代理店であるY社
に就職し、ラジオ局ラジオ推進部に配属され勤務していた
が、平成3年8月27日に自宅において自殺しました。
Aの両親は
AがY社から長時間労働を強いられたため
にうつ病に陥り、その結果自殺に追い込ま
れたとして、Y社に対して安全配慮義務違
反または不法行為による損害賠償を請求し
た事件です。
判決においては、
Y社のラジオ局ラジオ推進部に配属された後にAが従事した
業務の内容は、主に、関係者との連絡、打ち合わせ等と、
企画書や資料等の起案、作成とから成っていたが、所定労働
時間の経過後にしか起案等を開始することが出来ず、その為
長時間にわたる残業を行うことが常況となっていた。
この最高裁判決は、企業における労務管理
のあり方全般に大きなインパクトを与えま
した。
同判決ではもっぱら、損害賠償額あるいは安全配慮義務
のとらえ方に注目が集まりましたが、実は「長時間労働」
の認定方法が、その後の裁判実務、行政監督に多大な
影響を及ぼしているように思われます。
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2010年09月30日
ダラダラ残業と労働時間
労働法の専門書を見れば、おおむね
「労働時間」は次のように定義されて
います。
「労働者が使用者の指揮命令下に置かれて
いる時間」
最高裁、行政解釈とも同一の定義を行っています。
とはいえ、この定義は大変抽象的であるため
解釈上、多くの難問が生じることになります。
その一つとして、製造工場などにおける更衣
時間の問題があります。
始業時間前に工場内の更衣室で更衣を済ませて
おくことが義務付けられていた場合、労働者は
場所的には使用者の支配下にはありますが、同
更衣中に具体的な作業に従事しているものでは
ありません。このような時間について、最高裁は、
当該準備行為を事業場内において行うこと
を使用者から「義務付けられ、又はこれを余儀
なくされたとき」、労働者は「指揮命令下」に
あるものと判断しています。
(三菱重工業長崎造船所事件 平成12年3月9日最高裁判決)
その他、裁判上よく問題となるものに、ビル警
備業における夜勤勤務があります。ビル警備業務
では、勤務時間中に宿直室において一定の仮眠を
とることが許されている場合がありますが、仮眠
時間が「労働時間」であるか否かが問題となるもの
です。この時間について最高裁は、同仮眠時間が
使用者の指揮命令下に置かれていない時間であるも
のといえるためには、労働者が実作業に従事していない
ことに加えて、当該時間に労働者が労働から離れることが
保障されていることが必要であるとしています。
具体的には仮眠時間中の待機や、電報電話等に対して
直ちに相応の対応をとることが義務付けられている
場合は、
「労働からの解放が保障されていない」ことに
なり、当該仮眠時間は「労働時間」に該当すること
になります。
(大星ビル管理事件 平成14年2月28日最高裁判決)
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