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2008年09月17日

国際労働関係の適用範囲

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では、今日も裁判事例で考えて

もらいます。

被告側使用者Yは、ドイツに本社をおく航空会社です。

原告側労働者X1~X3は、Yに雇用され、東京ベース

の客室乗務員として勤務していました。

Yは従来、東京ベースの日本人客室乗務員に対して

ドイツと日本の生活費等の差額を補填する趣旨で

付加手当を支給していましたが、ドイツにおける給与

所得に対する課税方法が変更され、X1~X3の給与

の手取額が増加したことを理由に、付加手当を撤回しました。

そこで、X1~X3は、付加手当の撤回が無効であることを

理由として、Yに対して同手当等の支払いを求めて

訴えを提起しました。

手当撤回の有効性を判断する前提として、

X1~X3の労働契約には日本法、ドイツ法の

いづれが適用されるか論点となります。


なお、X1~X3はドイツ本社で採用を受け

さらに、すべての人事面等の交渉は

フランクフルト本社の人事部と交渉しています。

また、X1~X3のフライトスケジュール等もすべて

ドイツの本社の担当部署でおこなっています。

さて、X1~X3はこの裁判は勝ったでしょうか?

負けたでしょうか?


考えてみてください。東京地裁判例です。






答えは「労働者側敗訴」です。

では、その理由です。

労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法等

労働法規は、日本国内において営まれる事業に対しては

使用者・労働者の国籍を問わず、、また当事者の意思の

いかんを問わず適用されます。

しかし、これに該当しない企業の問題については

当事者の合意により準拠法が決定されます。

当事者の合意が明確な形で存在しない場合は

様々な事情(当該契約が締結された場所、就労

の場所、労働者の生活の本拠地など)を考慮して

出来る限り当事者の暗黙の意思を探求して、準拠法

が決定されるとあります。


つまり、本件についての判決内容では

1.X1~X3らの各労働契約の内容は、

  ドイツで締結された労働協約により

  合意されている。

2.X1~X3らは、付加手当等、個別な

  労働条件についてはフランクフルトの

  人事部と交渉していた。

3.X1~X3らに対する具体的な労務管理

  や指揮命令等についてはドイツの担当部署

  が行っている。

4.X1~X3の募集、面接、採用決定、労働契約締結

  もフランクフルト本社で行っている。

以上の諸事実を総合すると、X1~X3とYとの間に、本件

各労働契約の準拠法はドイツ法であると暗黙の合意が

成立していたものと推定することが出来るとの判決でした。

これに該当するのは、外国で事業を営む日本企業の従業員

や海外の企業で働く日本人労働者には労基法が適用されず

準拠法によることになります。

グローバル化した日本では当然問題となる事項です。

(ドイッチェ・ルフトハンザ・アクチェンゲゼルシャフト事件)




労働法もペッタンもグローバルにお願いします。


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