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2009年05月20日

公務就任と休職




今日は個別労働紛争の判例事例について説明します。


労働者Xは、Y社に入社して以来勤務を継続しています。

しかし、Xは町議会議員選挙に立候補して当選し、

同議員に就任することになりました。

そこで使用者YはXに対して、

公務就任が就業規則および労働協約に

該当することを理由に、Xを特別休職

(本休職は無給)処分とし、合わせて

本社人事部への配置転換を通知しました。

そのため、Xが本件休職処分等が無効である

として従業員たる地位の確認等の仮処分申請

を行いました。


原決定は、本件休職処分等を効力を無効としましたため

Y社が意義を申し立てました。

それぞれの主張は次の通りです。

1.労働者Xの主張

(1)労働基準法7条(公民権行使の保障)は労働時間中

   の公務執行を理由に労働者を休職、解雇等不利益に

   取扱うことを禁ずる趣旨であるため公務就任を休職

  事由とする就業規則および労働協約の各規定は無効である

(2)仮に就業規則および労働協約の各規定が有効であっても、

  就業規則および労働協約によれば、長期にわたりその職務

  を離れることが本休職処分の一要件であるが、労働者Xは

  町議会議員に就任してもせいぜい年間30日間職務を離れる

  にすぎず、しかも一日中とは限らないのであるから、その要件

  を欠くことになる

(3)仮に本件休職処分が上記の要件を満たしているとしても、上記

  処分は熱心な組合活動家であった労働者Xを職場から排除する

  ことを目的としたものであり、使用者の権利の濫用であり無効である。


2.使用者Yの主張

(1)労働基準法第7条は労働者の労働契約上の義務の履行と労働者

  の公的活動との調和を図る趣旨であり、就業規則および労働協約の

  諸規定は労働基準法第7条に違反せず有効である。

(2)労働者Xの町会議員としての活動日数は議会内外を含めると年間

  100日程度にのぼることが予想され、本件休職は有効である。


  さて、労働者Xおよび使用者Yの主張から判断して

労働者Xは勝ったでしょうか?負けたでしょうか?

考えてみてください。大津地裁裁判例です。






答えは「労働者Xの敗訴」です。

では、その理由です。

従業員が公職に就任したため長期にわたって継続的または断続的

に職務を離れることになり、

当該従業員を働かせても労働契約上の

債務の本旨に従った履行が期待出来ず、

その結果業務の正常な運営が妨げられ

るときは、特別休職にする旨の就業規則

および労働協約の規定は労働基準法第7条

に違反しない。


そのため、就業規則や労働協約の規定によって、連日その日のうちに

処理することを要する研究所の作業に従事する労働者Xが、年間40日

を議会活動に費やす町会議員に就任したことを理由に、同人を

特別休職処分とし、研究所勤務から本社人事部付に配置転換

したことは権利の濫用には当らないとしました。

    
  (森下製薬事件 昭和58年7月18日判決)

本判決の焦点は、労働基準法7条は労働者の公民権行使の

保障をしており、同条の「公民としての権利」に公務就任権

が含まれることは、今日争いがないところですが、

公務就任を理由として、いかなる不利益を課す

こともできないのかは同条との関係で

問題となります。


同条の関係で有名な裁判事例として、十和田観光電鉄事件

(最高裁 昭和38年6月21日判決)においては、

「公務に就任することが会社業務の遂行を著しく阻害

する虞れがある場合においても、従業員を懲戒解雇に付す

ことは許されない」として、懲戒解雇を否定しまたが、

「普通解雇に付するは格別問題ない」としています。

このことから、公務就任を理由とする普通解雇は許される

と理解されることとなり、その後判決はその流れとなりました。

しかし、労働基準法第7条は、処分の性格にかかわりなく、職

を失うことなく公民権を行使しうることを第一義に保障したもので

あると解されることから、上記判例の流れには問題があると

言えます。

そのため、本事例の判決は下級審ではありますが、

労働基準法第7条の趣旨に相当の配慮を示す

重要な判断を下したと言えます。




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