この記事は残業に関するトラブルの対応(3)について書かれています
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2009年09月28日

残業に関するトラブルの対応(3)



 

 1.残業代込みで年俸制を導入した場合に、時間外

   割り増しの支払いを請求されないための条件

  
  
  
 年俸制であっても、当該従業員が労基法41条の管理監督者などに

 該当しない場合には時間外割り増し賃金を支払う必要があります。

 問題はあらかじめ「残業代込み」という点をどう考えるかという点です。

 労基法37条は使用者に対して、時間外労働などについて割増賃金

 の支払いを命じ、その計算方法についても詳細に定めています。

 しかし、法所定の計算方法によらなくても結果として、法所定の計算

 方法による額以上のものが支払われている以上、労基法に違反する

 ものでなく、法的に問題はありません。(関西ソニー販売事件大阪地裁

 昭和63年10月26日判決)

 つまり毎月の給与の中に割り増し分を折り

込んで支払うことも、一定の要件のもとで

可能となります。

その要件としてまず必要なことは、当該金額

が労基法所定の割り増し以上のものなのか

どうか確認できることです。


 そのためには残業代込みの金額だと説明しただけでは不十分であり、具体的に

 どの部分がいくらが割り増しに相当するのか、明確に区分出来ることが

 要求されます。判例でも、割り増しを含めて年俸額を決めていたとしても、毎月の

 給与から割り増し部分が明確に区分できない限り、別途、時間外割り増しを支払う

 義務があるとしています。(創栄コンサルタント事件大阪地裁平成14年5月17日判決)




 さらに割り増し部分が明確であったとして、次に労基法所定の方法で

 計算した割り増し金額以上の額が支払われていることが必要です。

 したがって残業が多くて、あらかじめ割り増し額では不足するという

 月には、その差額を支払うという定めになっていることが求められ

 実際に適正に運用されていることが必要です。

 なお、年俸額のうちいくらを時間外割り

増しとするか(何時間分の残業を予定

するか)は、年俸制度の設計の問題で

あり、これについて特段の定めはありません。


 この点は契約自由の原則に委ねられているといえます。

 ただし、おのずと限界はあり、36協定の上限をはるかに

 超えるような設計はそれ自体不合理ですので、当該事業所

 の平均的な時間数や、年俸制が適用されていない他の従業員

 との均衡などを勘案して客観的な説明が出来る範囲で時間数

 を設定することになります。

 ところで、たとえば年俸額を18等分して、

18分の6に該当する部分は賞与として

支払うとしている例がありますが、「賞与」

として支払われていても、あらかじめ

支給額が確定しているものは割り増し

賃金計算の基礎に算入する必要がある

としていますのでこの点でも注意が必要です。

 



 

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『残業に関するトラブルの対応(3)』へのコメント

先生、質問です!
職場のいじめについて・・・
使用者に対して、当該行為の上司の行為は当然として、
事業の執行上においてなされた場合は、使用者の意思に関わらず、
民法715の使用者責任、契約上の職場環境配慮義務違反として
の債務不履行責任(民415、労契5)を問うことはできますか?
また、出来る場合は、請求すべき額は、セクハラに準じておおむね6ヶ月程度の賃金額が妥当でしょうか? <m(_ _)m>
Posted by KAMEREON at 2009年09月29日 17:15
こんばんわ
お返事遅くなって申し訳ありません。

KAMEREONさんのご質問は段々レベルが高くなって
お答えするのが大変になっています。

ただ、職場のいじめについては、パワハラの範疇に入ります。
当然民法715条の使用者責任や包括的に安全配慮義務違反
となることは間違いないと思われます。
就業規則では当然一発解雇の条文に入っています・・

使用者が見てみぬふりをした場合は、労働契約法第5条安全配慮義務違反から債務不履行による損害賠償請求は可能と思われます。
裁判となれば不法行為として訴えるか、債務不履行として訴えるかになると思いますが、必然的に会社側にその責任がないことを立証する義務がある債務不履行で争う方が有利かと思われます。

請求すべき額はその状況に応じて千差万別であり、専門家におまかせになられるだろうと思われますのでここでは差し控えます。
Posted by くまさん社労士 at 2009年10月01日 23:10
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