2009年07月06日
会社の秘密情報を持ち出す社員への対応(1)
では、今日は労働問題について考えてみます。
1.情報の持ち出しに対して、刑事責任を問うこと
の可否
機密書類の持ち出しについては、業務上横領罪や窃盗罪が
成立します。業務上横領とは、業務上自己の占有する他人の
物を横領することをいいます。つまり、
自分が管理していた書類を持ち出した
場合は、窃盗ではなく、業務上横領となります。
逆に上司等他人の管理していた書類を持ち出し
たような場合は窃盗になります。
書類を持ち出してしまえば、その時点で窃盗に
なりますので、資料を持ち出して外でコピーをした後に、こっそり
元に戻しても窃盗罪に該当することはかわりません。
ただし、窃盗や横領の対象となるのは「財物」であり、
「情報」「秘密」といった形のないものについては
窃盗や横領は成立しません。
社内でコピーして、コピーの方を持ち出した場合(原本の資料は
社内に置いたまま)は、「資料」自体の窃盗・横領は成立しません。
そのため、このような場合は会社所有のコピー用紙を
盗んだという観点からしか犯罪の成立を
論ずることしか出来ません。
例えば凸版印刷事件(東京地裁昭和40年6月26日判決)
では、会社所有のコピー用紙にコピーして持ち出す行為
について、コピー用紙の窃盗であるとしています。
コンピュータのデータをプリントアウトして持ち出すのも
プリント用紙の窃盗でしか裁くことはできません。
城南信用金庫不正告発事件(東京地裁平成9年12月5日判決)
では、信用金庫の支店長らが、預金事務センターのホストコンピュータ
に記録されている預金残高明細等を、「支店備えつけの用紙」に
印字し、これを共犯者に郵送するために封筒に封入した事例で
では、用紙と封筒の窃盗罪が成立するとしています。
情報自体に対する窃盗罪は成立しないため、
窃盗罪での刑事責任については軽微な
ものになってしまいます。
2.パソコン内のデータを他の記録媒体にコピーして
取得した場合の刑法犯成立の可否
会社所有の磁気テープ、フロッピー、CD-ROM等なども
当然「財物」として窃盗・横領の対象となります。つまり、
会社のフロッピー等に情報をコピーして持ち出した場合
には、フロッピー等の窃盗となります。しかし、
自分のフロッピーを持参してこれに情報を
コピーして持ち出した場合には、刑法上の
窃盗・横領には該当しないことになります。
このような場合については、不正競争防止法
による罰則で対応することになります。
また、平成12年2月から不正アクセス防止法が施行され
他人のIDやパスワードを使ったり、セキュリティーを攻撃
することによって、コンピューターに不正にアクセスした
場合には処罰の対象とされることになりました。ただし、
この罰則は当該コンピュータを直接操作するのではなく
ネットワークを通じてアクセスした場合に限られます。
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『会社の秘密情報を持ち出す社員への対応(1)』へのコメント
Posted by choco at 2011年06月01日 15:39
会社の秘密情報を会社のコピー機を使って、コピーし持ち出した場合、コピー用紙の窃盗ということですが、そんな安価なコピー用紙ぐらいで窃盗罪になるのでしょうか?